何年ぶりかに酒田まつりへ。射的,まだあるのか。しばらく見てみる。 当然落ちるわけがない。「倒れただけじゃダメだよ,落とさないと」 これもおなじみ。もうしばらく見てみる。軽そうなキャラメル箱に当たっても 倒れない。コルクの質量ではまったく運動量が足りないのだと分かる。 それからよくみると,思った程速度が出ていない。 しかしとてもよい効果音が出るのですごくはげしく当てているつもりになる。 あの鉄砲,パーンという音がうまく出るように作られている。
かれこれ30分程見ていたが,だれも景品を落とせていない。 幕のところに落ちている景品はやはりダミーだ。そしておっちゃんは 後を向いて札束を数えてはポケットにしまう。 子供らから金を受け取り,礼をいうどころか狙う子供らに小言を言い, ひたすら札束を数える。
脇から小学生達がささやいている。「ほら,ゲームソフトとか高いやつは 裏にガードがあるよ,だから絶対落ちねーよ」,「うんうん」, だいじょうぶ,ガードがなくったって倒れやしない。 景品出すつもりなんかないんだし。
おとなはそれを分かって子供らに500円を与える。 こどもは一縷の望みにドキドキしながら狙う。
あくどいのかな。ふと考えた。でも,稼いでもせいぜい十万単位で, あのひとたちなら一週間で呑んじまうだろう。 わざわざ酒田くんだりまで来て,そんなもん。 いまや,仮に当たっても実体のないデジタル画像だけ配れば,それも 相当低い確率で配れば,数千万円の利益が一瞬で得られるものがある時代。 折角酒田まで来てくれてる人には お楽しみ代の500円の寄付と考えてもまあいいんじゃないか, そう考えながらその場を去った。