GTS1000AのABSのエア抜き
はじめに
ABS付きGTSのエア抜きの難しさは定評があります。ブレーキに不具合を訴える率が非常に高いのがGTSの特徴です。それでいいのか?
希にHU(ハイドロユニット)に故障がある場合があり、エア抜きを完全にしても治らないようで、そうなると作業の手間だけでなく金額的にもかなり痛いらしい。HU交換は20万円以上かかります。
で、私も長年不具合を感じて来たABSを何とかしてやろうと、これまでいろいろと情報収集してきたわけです。それをここにまとめてみます。
サービスマニュアルにも書いてないので、YAMAHA系ABS車に乗る方必見です。
ABS不具合内容
ABS作動後、レバーが奥まで入ってしまう。ポンピングすると戻る。
何もしてないのに、深く入ってしまう。ポンピングすると戻る。
ポンピングしていても、タッチの深さにバラツキがある。
タッチがややスポンジーなのはラインの長さやキャリパー固有の特性と考えられますのでここでは不具合ではないものとします。
特にタッチの深さの変動は、
Fキャリパーのピストンが他のキャリパーに比べて戻りやすい構造なのではないかと考えられます。
マスター側にエアを噛みやすい構造のようです。特に寝かしてしまった後に顕著ですが・・。
原因
まず、ABS車のブレーキ油圧系統は次のようになっています。前後それぞれ独立していますので、実際には1つのHU(ハイドロユニット)内には2系統入っています。
青線が1次回路、赤線が2次回路です。通常時は1次回路だけで直接マスターシリンダからキャリパーにフルードが流れます。(下のバルブ図の左側の状態)
ABS作動時には、バルブの状態が左右の状態に細かく切り替わり、1次回路を遮断し、キャリパー側1次回路と2次回路がつながることによって、キャリパーの圧力が2次回路に抜けます。
2次回路には可変容量のバッファがあり、1次側から抜けたフルードは2次側のバッファに溜まっていきます。
ABSの作動が終わると、ポンプにより2次回路の余剰フルードが1次回路に押し戻されます。
通常の状態では、エア抜きを行っても1次回路と2次回路はつながっていないので、1次回路しかエア抜きがなされません。
ここで、もし2次回路にエアが入っていたとすると、ABS作動後にポンプによってエアが1次回路に戻されます。
これで、見事にエア入り1次回路が完成するわけです。
さらに、これらはすべてHU内の狭い範囲内で起きる現象なので、ABS作動毎にエアがまた1次回路から2次回路へ入ったり、ぐちゃぐちゃにループする可能性もあります。
ABS車のエア抜き
エア抜きは次の要領で行います。
1次回路を通常通りエア抜きします。
ABSを強制作動させ、2次回路のエアを1次回路に戻します。
再び1次回路のエア抜きを行います。
完全に抜けるまで繰り返します。
とても面倒ですネ。
1次回路のエア抜き
まあ普通のバイクと同じなんですが、GTSのFキャリパーは外して縦にしないとブリーザが上向かないので大変です。(純正の治具があります。型番:90890-01453)
吸引装置を使用できる環境での作業をお薦めしますが、外したFキャリパーを縦になるように紐で吊り下げたりすれば十分作業できます。
Fのマスター側に噛んだエアがある場合は、先に排出しておかないとすべて延々とキャリパー側まで押し出していかなければなりません。
Fマスター側のラインに噛んだエアを抜くには、一旦レバーを取り外してみます。レバーが付いている状態では戻りきらない位置までピストンが戻るので、ラインからマスターにエアが逃げます。これでもダメなら諦めてバンジョーを緩めます。
ABSの強制作動
実際に急制動を行うという手もありますが・・・
ABSのECUをディーラーモードにして行います。
テールカウル内にメクラ蓋がついた2つのカプラがあります。
右側(写真左)の白い方がABSのテストカプラです。
これの、黒と空色の配線を短絡するように接続するとディーラーモードになります。
専用のテストアダプタ(型番:不明)もありますが、短絡させるだけなのでハーネスは自作で十分です。
10cmくらいのケーブルの両端に
110平型端子(メス)をつけただけ。
材料費60円くらい。
こんな風につながります。
先に、バッテリーの電圧が10.8V以上あることを確認します。
メインスイッチがOFFの状態で上記の接続をします。
この状態でメインスイッチをONにするとディーラーモードになりますが、この際、前後ブレーキを強くかけた状態でONにすると、通常の燃料ポンプ作動後にABSが前、後の順に強制作動します。
作動時には、手に細かい振動が感じられ(前ブレーキの場合)、少しずつレバーが入っていきます。次にHUのポンプが作動してレバーが押し戻されます。
その後、ABS警告灯が点滅し、その状態によって過去のABSエラーのlogが表示されます。(詳細は割愛)
それで、
結局、強制作動だけ行ってから実走行によるABS作動テストをしたら、不具合が確認されなかったので、今回の私の場合はエアは噛んでなかったということで一件落着。
これらの作業でも不具合が解消しない場合は、HUの故障等、別の問題が考えられます。
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