書評「宇宙よ」

この日じゃないかもしれないが賑やかし。
ようやく読み終わった。

TBSの秋山豊寛がソユーズでミールに行った、あれを、立花隆が対談から書き起 こしたドキュメンタリー。

当時、日本人初の宇宙とか騒いでたが、一方でNASA側で準備してた日本人宇宙飛 行士(毛利氏ほか)を出し抜いて、行く必然性のない民間人が、まだ冷戦中のソ 連に金払って、バブル期の日本の金の力にモノを言わせてやったというような構 図を冷めて見てた記憶がある。
というか、アホ臭くて見てなかった。

当時のその感覚はまあ的を射ていたということも解ったが、それだけでもないな と。やはりあれだけのことをするとなると、金云々じゃなくて相応の背景がある なということは解った。
当時、それなりに見ておいても良かったかもしれないとも思ったが、当時見てし まっていたら意見は変わっていたかもしれない。
この手の話を総括するのは非常に難しい。見て、思うところがあっても、感想、 意見を表するのは危険だなと。

で、それから25年経った今、結局あのプロジェクトは何だったのか。
正直、無意味だな。
当時のソ連の技術水準や宇宙開発の状況を記録した貴重な資料とは言えるが、そ れをもって何かに貢献したかというと、何もない。と思う。

秋山氏が本社に対してブチ切れているシーンが沢山あるが、本当にアホだ。何し に行かせたんだろう。想像力が無さすぎる。当時高校生だったわしの方がよっぽ どリアルに想像してたと思う。

まあ25年前の宇宙技術、それもソ連のを垣間見たのは純粋に面白かった。
東側ならでわのグダグダ感、アメリカも違う意味でグダグダだろうなとか。
サリュートからソユーズ、ミール、スペースシャトルと国際宇宙ステーションと の変遷、バックアップ体制、宇宙ステーション維持に何がキー技術となるのか、 など。若いころのわしじゃ解らんかったろうなと思うこともある。
TBSのPJ体制とか、金は出すけど人は居ないし、片手間で殆どまじめに取り組ん でた人いないんだろうなとか。

秋山氏、の生い立ち、バックグラウンドも意外だった。まあ、変人だわな。
共感できる部分もあるし、嫌悪感の様なものもある。ジャーナリスト特有の気味 悪さとか。でもよくやったんだろうな。能力もあったし、PJがグダグダでなく、 地上がお祭りじゃなく、ちゃんとやったらもっとできたんだと思う。NHKだった ら、とか思うし。バブル期の民放じゃなぁ。
今現在のマスコミの体たらくを見ると、もはやNHKだろうが民放だろうがという 感じだが、国際宇宙ステーション時代になって、多少進歩したのかな。
報道は、相変わらずアホだな。
いや、結局見る人がアホすぎて、的を絞れないんだよな。

宇宙技術っていうけど、本当にそんなにすごいのか?と思ってしまう。
機械の信頼性だけだろ。

2013年の1月頃か?時間調整でスミソニアンに行ったとき、秋山氏のサインが残 るそのソユーズ帰還カプセルが展示してあったのを見た。
今になってアレの持つ意味が解った。あの固体であることはどうでもいいが(ソ 連が金のために売っただけ)、帰還カプセルたるものの焦げっぷり、大きさ、云 々。いかにして断熱(放熱)するか、とかはなるほど!だった。秋山氏のサイン が無かったら印象に残るほどの展示じゃなかったし、アレを見てなかったらこの 本読まなかったかもだし。

イマイチすっきりしない後味だが、現実らしいといえばらしい。
こんなもんなんだろ。

そういや立花隆って、どうなったんだろ。
今更彼の取材力とか科学技術への知識(というか理解するセンス)とかを感じた。 もっと読んでみたい。古いものが多そうだが。

追記

批判も多い立花隆。
まあ、本て言うのは所詮著者の想いに偏るからね。著者によってその辺の癖はど うしても出る。
事実の部分に誤解やウソがあるとアレなんだが、それも程度問題だからね。事実 じゃない、と言われても、反論の事実が本当に事実かも誰も証明できないわけで。

あと、随分前に読んだ「田中真紀子研究」も立花隆の本だった。
盛岡時代かな。あれはわしの政治家に対する見方を変えたな。

華麗なる一族も政治?日本の権力構造を理解する参考になった。
山崎豊子も良い。

あーそしたら次は大地の子か。今読む本なのか微妙だが、一度通るべき道かと。


ITOH Osamu/ Sachi/ Guest Book/ 036@itoh.gentei.org